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つとみや あかつき
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おんなのこがすきです。
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創作倉庫。 基本的に手ブロ創作企画関係を収納してます。 初めましてのかたはカテゴリ「はじめに」をどうぞ。
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ひつぎちゃんが魔女になったこと。
モブだというのに…



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魔女め!魔女め!魔女め!

あいつを殺せ、火炙りにしろ、十字にかけろ!民衆は狂ったように彼女を追いかけた。
(こんなところに留まらなければ――)
昼間に降った雨で足下に泥が跳ねる。ブーツは素より、からげた白いドレスの裾が汚れていく。肩を越えた辺りで切り揃えた銀の髪も、投げ付けられた塵がまとわりついている。
硬いものが当たったらしいこめかみからは一筋血が、凝固して黒くこびりついて。
「キャア!」
飛んできた石が肩にぶつかり、体勢を崩して地面に手をつく。手首のすぐそこが擦れて血が滲む。
ドレスの膝や袖口、手袋が泥水に汚れた。
仕留めろ、掴まえるんだ、縄は何処だ、いや十字架だ、聖水は、牧師は――怒号が飛び交う後ろを怯えた目で振り返って、彼女はまた走り出す。

逃げたぞ!

怨嗟に満ちた声に捕まるのが怖かった。
走るうちにいつの間にか街の外れの墓地に迷い込んでいた。立ち並ぶ墓石、墓石、墓石――気が狂いそう!
びしり、誰かが投げつけたロープの端が足首に当たって足がもつれた。すぐそばの十字の墓石に崩れ込む。
「ぃ……」
「さあ、もう逃げられんぞ!」
「魔女め!おい、縛り上げろ!」
善良な街人はそこにはいなかった。血走った目はどこか、そう、獣染みているな、と怯えながら思う。後ずさろうとしても、墓石に背を預けるような形で押し当てることになるだけだった。
獣染みた目をした街人たちはじわじわと輪を狭めてくる。
「ぃ……いや」
恐ろしかった。伝染病が広まったのは彼女の責任でも仕業でもなく、けれど彼女は余所者だった。
誰か――誰か助けて。
「おい、牧師はまだか!」
「牧師じゃねえ、神父だよ」
「どっちだっていい!この魔女を殺せ!」
「聖書持ってこい、なにをしでかすかわかんねぇぞ」
突き刺さるような声と視線。それが恐ろしくて、彼女の鮮やかな青い目にうっすらと涙の膜がはる。
「い……や、ぁッ」
乱暴に髪を捕まれて、布のカチューシャが地面に落ちる。
手足を縛れ――いっそ切り落としてしまえ――喋れないようにしろ――
「いやあああああっ!」
身を捩って手を振り払う。墓石の後ろにまわって、また走ろうとして、手首を捕まれる。
「離して!わたしは――関係ないわ!」
「黙れ魔女!」
「お前のせいだろう!」
「そうだ、お前が来てからおかしくなった!」
「お前が呪いをかけたんだろう!」
彼女の、墓石を掴む指に力がこもってなんとか手首を解放しようとするけれど、獣染みた目の街人は力も獣染みていた。それが恐ろしくて、彼女はまた怯える。
誰か、だれかたすけて。
「ち、違うわ、あれは」
「うるさい黙れ!」
「神父さまが来た!」
「誰かロープを寄越せよ!」
厭だった。おぞましかった。
「た」
乱暴な仕種で両手首が引かれ、ざらざらした縄があたる。
いやだ――だれか!

「たすけてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

金切り声に答えたのは、木材が壊れる音と土塊の音と墓石のあたる鈍い音。
ぼこり、ごつり、がたん、ごつん。
棺を壊して地面から土を掻き分けた骨がごとごとと這い出ていた。
「……ひ」
棺を破るときに砕けたらしい頭蓋の欠片、肩関節から外れた腕の骨がごろりと地面に落ちる。中には腐りかけて異臭を放つ肉がぼたぼたと落ちるものもあった。
「う……うわあああああ!」
彼女の手首を捕らえていた男の腕を掴んだ、比較的肉の残った屍体の顔からから眼球が滑り出る。
突然に起こった出来事に民衆が恐慌に陥るのはすぐだった。騒然とする彼等に呆然とする。
乱れた髪のむこうに現れた彼女の助け手は生きていなかった。神父が振り撒いた聖水に反応して僅かに動きが鈍るそれは、墓石の下に眠っていた屍体であった。
震える両手に絡む縄を解いて、彼女はすっくと立ち上がる。少々よろけながらも人混みから離れて、墓地を囲む鉄柵の端――鉄の門扉に手をかける。
「とびらよ、われにつかいを」
震える小さな声で言った彼女の足下に、住民によって飛ばされたのだろう罅の入った骨が転がる。大腿骨だと思われるそれを拾った彼女の頭上に、ばさりと翼を広げた鴉。
門扉に止まったそれの喉には人間の唇があって、そこから硬い女性の声が流れる。
「ご用件をどうぞ」
「魔女の街へつないでちょうだい……わたしは魔女候補、シルヴィア・クインリー」
「了解致しました」
ぎしり、と鈍い音とともに鉄の門が開く。
門の向こうにはあるべき風景ではなく、手入れの行き届いた庭が広がっていた。それを見た彼女の顔がくしゃりと泣きそうに歪み、奥の人影を認めて走り出す。
庭の奥には、上品な老婦人が座っていた。
「魔女長さま!」
駆け寄った彼女が老婦人の前にへたりこむ。膝にとりすがって俯いた銀の髪をそっと撫でて、穏やかな声色で婦人が微笑んだ。
「お帰り、"スカーレット・アンデッド"」
呼び掛けに弾かれたように彼女が顔をあげる。こぼれそうに見開いた目は驚きに彩られた。
「ぁ……」
「"死ねない赤絨毯"――"スカーレット・アンデッド"。あなたの二つ名よ」
優しく彼女の手を叩いた婦人に、泣きそうになった彼女がすっくと立ち上がる。
「わたしは……わたくしは、"死ねない赤絨毯"!名をしかばねと改めますわ!」
薄く涙の溜まった青い瞳。
「フルネームはそのうち報告させていただきます!黒魔女として――ああ、称号も是非考えてくださいませね!」
虚勢を張るように並べ立てる彼女の頬を涙がほろほろと伝う。

「わたくしは、魔女ですわ……!」

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魔女の街では誇りをもって魔女を名乗るのだ。魔法使いはあんまり。男でも魔女を名乗る。魔女はあらゆる権力に屈しない自由な魂を意味している。対して魔術師は「権力におもねり誇りを失ったもの」という意味を込めた蔑称。一般の人に言われると魔女の街の人たちはイラッとする。

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