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[02/18 かや]
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初めましてのかたはカテゴリ「はじめに」をどうぞ。
幼少雛菊ちゃん(@えぬたろ)と紺瑠璃の出会い。
即興小説トレーニングで制限時間30分だったので、ちょっと駆け足。 ---------- ぅるるる、と、それはもう唸り声をあげることすらできないようだった。 喉を吐息が通るときに、かろうじて音が出るだけ。 その息も荒く、ひどく衰弱した様子で、とてもかわいそうだと思って、どうしてか自分がおそわれるとはちらとも思わずに、つい声をかけたのだ。 「ね、虎さん……どうしたの?」 だってそれは、牙を向くことすらできなさそうだったから。 手負いの獣こそがいちばん危険なのだと、それを知るのはあとからだ。 「すごい怪我よ。手当をしてあげるね?」 安心させようと思って、自分はすこし笑ったのだったと思う。 それに対してそれは、その虎は、ばかにするようにひとつ息を吐き出して、ぐおう、とわずかばかり力強い音を出した。 「手当などいらん。力が戻れば恢復などわけない」 それは、その虎は、その青い虎は。 固まった血で肩や顔を赤黒く染めた青い虎は。 地面に横たわって、それでも堂々と、似合いの少し低い声を掠れさせて言った。 「手当をしたいと言うなら、娘、お前の肉を寄越せ。お前の肉なら恢復は早い。差し出せぬなら放っておけ。……わたしは、消えたほうがいいものだ」 すいと私から視線を外して言ったその言葉は、なんだかひどく甘美だった。 ああきっと、この声に誘われてこの獣に自らを差し出した人はいる。 「いいよ」 「は」 「私を食べたらいいよ。それであなたが助かるなら、私、食べられてもいいよ」 伝えた言葉にそれは絶句しているようだった。 自分でもばかなことを言っていると思うけれど、なぜだか差し出してもあいと思えたのだから仕方なかった。 「痛いのはいやだから、なるべくすぐに全部わからなくなるほうがいいなぁ」 「……馬鹿か、お前は」 ぐうと血に汚れていない、開くことのできるほうの瞳を見開いてこちらを見て、呆れた声音でそれは言う。 「ひどいなぁ、ばかだなんて」 「馬鹿だろう。なぜ死に急ぐ。お前、まだ産まれたばかりだろうが。生きろ、馬鹿者。わたしはもう充分に生きた。だからいいんだ……」 しゃべるうちに疲れたのか、それとも諦観なのか、言葉の終わりは力がなくなっていた。 ああ、死んでしまうのかしら。 このきれいな獣は、汚れたままで死んでしまうのかしら。 「……だって、あなたがこのまましんでしまうのは、もったいなく思えたんだもの」 そっと獣に近づいていく。 哀れなけもの。 手負いのけもの。 最も警戒すべきもの。 近寄るときにすこし脚を引きずったのを、彼は見逃さない。 「……脚が悪いのか」 「すこしだけ」 「……いいだろう娘、そうまで言うならお前を食らってやる」 はっと息を飲んだその次の瞬間、獣の巨体が想像もしなかった俊敏さで私に踊りかかってーー 「目が覚めたか、娘」 「……?あれ……生きてる……」 「馬鹿者。生きろ。わたしはだいぶ恢復したぞ。お前も生きろ。……お前の脚は、わたしが食った。脚だけでも、力のある子どもの肉だ。恢復は容易い。お前も、しっかり生きろ」 虎は、そう言って気まずそうに視線をそらした。 PR この記事にコメントする
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