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つとみや あかつき
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創作倉庫。 基本的に手ブロ創作企画関係を収納してます。 初めましてのかたはカテゴリ「はじめに」をどうぞ。
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幼少雛菊ちゃん(@えぬたろ)と紺瑠璃の出会い。
即興小説トレーニングで制限時間30分だったので、ちょっと駆け足。


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ぅるるる、と、それはもう唸り声をあげることすらできないようだった。
喉を吐息が通るときに、かろうじて音が出るだけ。
その息も荒く、ひどく衰弱した様子で、とてもかわいそうだと思って、どうしてか自分がおそわれるとはちらとも思わずに、つい声をかけたのだ。
「ね、虎さん……どうしたの?」
だってそれは、牙を向くことすらできなさそうだったから。
手負いの獣こそがいちばん危険なのだと、それを知るのはあとからだ。
「すごい怪我よ。手当をしてあげるね?」
安心させようと思って、自分はすこし笑ったのだったと思う。
それに対してそれは、その虎は、ばかにするようにひとつ息を吐き出して、ぐおう、とわずかばかり力強い音を出した。
「手当などいらん。力が戻れば恢復などわけない」
それは、その虎は、その青い虎は。
固まった血で肩や顔を赤黒く染めた青い虎は。
地面に横たわって、それでも堂々と、似合いの少し低い声を掠れさせて言った。
「手当をしたいと言うなら、娘、お前の肉を寄越せ。お前の肉なら恢復は早い。差し出せぬなら放っておけ。……わたしは、消えたほうがいいものだ」
すいと私から視線を外して言ったその言葉は、なんだかひどく甘美だった。
ああきっと、この声に誘われてこの獣に自らを差し出した人はいる。
「いいよ」
「は」
「私を食べたらいいよ。それであなたが助かるなら、私、食べられてもいいよ」
伝えた言葉にそれは絶句しているようだった。
自分でもばかなことを言っていると思うけれど、なぜだか差し出してもあいと思えたのだから仕方なかった。
「痛いのはいやだから、なるべくすぐに全部わからなくなるほうがいいなぁ」
「……馬鹿か、お前は」
ぐうと血に汚れていない、開くことのできるほうの瞳を見開いてこちらを見て、呆れた声音でそれは言う。
「ひどいなぁ、ばかだなんて」
「馬鹿だろう。なぜ死に急ぐ。お前、まだ産まれたばかりだろうが。生きろ、馬鹿者。わたしはもう充分に生きた。だからいいんだ……」
しゃべるうちに疲れたのか、それとも諦観なのか、言葉の終わりは力がなくなっていた。
ああ、死んでしまうのかしら。
このきれいな獣は、汚れたままで死んでしまうのかしら。
「……だって、あなたがこのまましんでしまうのは、もったいなく思えたんだもの」
そっと獣に近づいていく。
哀れなけもの。
手負いのけもの。
最も警戒すべきもの。
近寄るときにすこし脚を引きずったのを、彼は見逃さない。
「……脚が悪いのか」
「すこしだけ」
「……いいだろう娘、そうまで言うならお前を食らってやる」
はっと息を飲んだその次の瞬間、獣の巨体が想像もしなかった俊敏さで私に踊りかかってーー



「目が覚めたか、娘」
「……?あれ……生きてる……」
「馬鹿者。生きろ。わたしはだいぶ恢復したぞ。お前も生きろ。……お前の脚は、わたしが食った。脚だけでも、力のある子どもの肉だ。恢復は容易い。お前も、しっかり生きろ」
虎は、そう言って気まずそうに視線をそらした。

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